俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
(こ、怖かった……)
(クールビューティーの睨みは心臓に悪いわ……)
ハァーッと、深く息を吐き出して病室に戻る。
「アイシャが迷惑をかけた様で、悪かったね」
眉をハの字にして、困った様に笑うカミール。
「いえ、私こそ婚約者を、勝手に帰してしまって…… 一目だけでも、会わせてあげたかったのですが、このウィルスは本当に感染力が高くて…… 申し訳ありません…… 」
(病気で弱っている時は、特に好きな人に、甘えたいよね…… )
「気にしなくていいよ。僕はこの通りほぼ完治していて、数日で退院出来るし、こんな辛い時に近くで、アイシャにガヤガヤ煩くされても、アミールだって喜ばないよ」
「……アイシャさんは、その……どちらの婚約者なんですか?」
つい、気になって質問したが、聞いてしまってからハッとする。
「あ……、申し訳ありません。こんなプライベートな質問してしまって……」
「アイシャはね、うん、まあ、二人の婚約者と言えば良いのかな…… 」
カミールは、言いにくそうに、複雑そうな顔を向けると続けた。
「僕達兄弟は二人で、油田の開発や石油の関連の商取引、石油会社の経営なんかをしているんだけど、将来的にはどちらか一方が、会社を引き継ぐつもりでいるんだ。今は、僕は主に経済を、アミールは経営、商学って感じで上手くバランスが取れているんだけど…… 実は僕はもっと小規模で良いから、他の事業もやってみたくてね、会社はアミールに任せるつもりでいるんだ」
フフッと、夢見る少年の様な顔でカミールが笑う。
「アイシャは、親同士の繋がりで、僕達二人の幼馴染なんだ。ずっと両親に大切に育てられたからね、今の生活水準を下げるのは無理だって言って、会社を継いだ方と結婚するって、ずっと言い張ってるんだ」
「面白い娘……ではあるんだけど、ね」
困った様にフーッと、溜息を吐くカミール。
「じゃあ…… アイシャさんはアミールさんの婚約者…… って事、です、ね……」
口にした途端、なんだか、胸の奥がチクっとした様な気がしたが、私は気付がないふりをした。