俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「ん……」
アミールが、苦しそうな声を漏らした。
「ごめんなさい、煩かったですよね」
額の汗を、冷たく冷やしたタオルで拭ってあげると彼は、薄っすらと目を開き呟いた。
「……イラーハ……」
カミールよりも濃い、青の瞳が熱で潤んでサファイアを彷彿とさせる様に、キラキラと輝いている。
目を閉じていた時はわからなかったが、カミールに比べて、アミールの方が少し、目尻が上がっている。
カミールが柔和な知性的なイケメンなら、アミールは精悍な顔立ちの、気丈夫だ。
アミールから、愛おしいものを見る様な、熱い視線が私に向けられ、ドキンッと心臓が跳ねた。
「イラーハ……?」
何を言われたのかわからず、思わず繰り返す。
「アラビア語で女神って意味だよ」
隣のベットのカミールが、フッと優しい笑みを浮かべる。
私は思わずアミールの額に手を当てた。
「……何だ……?」
アミールが不思議そうに、私を見つめる。
「いえ、女神なんて言うから、まだ熱が下がらず、幻覚が見えているのかと思って…… 」
キョトンとして、アミールは目をパチパチさせる。
「俺の女神は、面白い事を、言う」
そう言って、アミールは私の手を取ると、チュッと、唇を押し当てた。
「え?! え?!」
突然の事に驚いて、手を引き戻そうと引っ張るが、アミールは、ガッチリと握りしめて離してくれない。
(び、びっくりした…… 。 流石、外国だわ。 挨拶で手にキスするなんて…… )
慣れない事に、ドキドキして、顔が熱くなる。