俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました

「名前は?」

「一花、相葉一花。 私の国の文字で、一つの花って書きます。」

「一つの花…… 唯一って事か…… 」

 フッと笑うと、アミールは心地よい、バリトンボイスで甘く、囁いた。


「一花」


 蕩けるような極上の微笑みは、病み上がりの気怠さを纏って、彼の色気を何倍にも、増幅させている。

(ひゃあああぁぁーーっ! な、何て恐ろしい破壊力。 こんな顔で呼ばれたら、自分の名前が、とても素敵なものに思えてくるから、不思議だわ )

 ホッコリとした気持ちになり、頬が緩んでしまう。

 イケメンの微笑みに、勘違いしそうになる。


「ずっと一花の声が聞こえてた。 心配そうに呼ぶ声、優しく励ます声、おはよう、おやすみ。 毎日、手を握っていてくれたのも一花だろう?」


 一つずつ、口に出して話されると、とても恥ずかしい事を、していた様な気がする。

 それでも、気づいてくれていた事が嬉しくて、自然に口角が上がってしまう。

 マスクで見えないのに、つい、恥ずかしくて、バレないように、握られてない方の手で、思わず口元を隠す。


「し、仕事ですから…… 」

 小さく呟いた私を気にも止めず、アミールは握った手を、何度も撫でる。

(て、手、手ーーっ、は、離してくれないかな……

 看護の時は何度も握った手なのに、なんだか妙に気恥ずかしい。


「アミールだ」

「?…… はい? アミールさん? 」

「敬称は要らない。アミールと呼んで欲しい」

 突然の名前呼びに、いえ、いえ、それは流石に無理です、と慌てて首を振る。

「それはちょっと……。 患者さんを呼び捨てになんて、他のスタッフに知れたら怒られます」

 必死な私の抵抗に、アミールはウーンッと唸ると、

「……わかった。仕方ない……、では、この部屋と、二人だけの時は必ず呼ぶ様に」

と、ニヤリッと揶揄う様な笑いを向けた。

「ほら、呼んでみて」

「へっ?」

「イヤ、イヤ、イヤ……」

 キラキラと期待に満ちた目で見つめられる。

(うゔっ……、何なのその可愛い顔は…… )

「ア、アミール……」

 両手で顔を覆い、くすぐったい感情を隠す。

 指の間から、覗き見すると、至極満足そうなアミールが、煌びやかな笑みを浮かべていた。

 



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