俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「聞きたいんだが…… 一花はいつも患者に対してはこうなのか?」
アミールは口を尖らせ、拗ねた様な表情をする。
「? こう、とは?」
私は質問の意味がわからず、首を傾げる。
「日本人の特質? それとも一花だけの性質なのか? 普通、見ず知らずの人に、いくら仕事だからって、こんな着きっきりで、献身的な看護は出来ないだろう」
こんな看護は俺にだけにしろ! なんて、アミールはゴニョゴニョと呟いている。
「そんな! 私なんて、他の看護師に比べたら気が利かないし、まだまだで…… 今だって、アイシャさんに不快な思いをさせてしまって…… もっと違う言い方が、出来たかも知れないのに……」
お二人の意見も聞かず、勝手な事してしまって申し訳ありません、と頭をさげる。
「ああ、アイシャか…… 彼女のことは気にしなくて良い。 あれのヒステリーはいつもの事だ 」
眉間に皺を寄せ、フッと笑う。
(凄い…… 一言も、状況を説明してないのに、行動がわかるなんて、それだけいつも一緒に居るって事なのね)
そんな関係が、とても羨ましいな……と素直に思う。
「……日本では一人の人を、専属に診る事は殆どありません。 寧ろ、こんな着きっきりなのは、初めてで……。 私の方こそ、色々と自由にさせて貰って、とてもやり易いです。 それに、休みの日まで看護に来るのは、本当は迷惑だと思いつつも、こっちには知り合いも居ないし、する事もなくて……」
私こそ助かってますと、眉をハの字に下げて、笑う。
「それでも、俺はには一花の声が、ずっと聞こえていたから、現実に戻ってこれたんだ。 仄暗い闇に覆われた、夢の中で一人、彷徨っていた時、光の中から、黒髪の女神が何度も俺を呼んだ。 優しい声に導かれたんだ。 まさか目覚めたら、目の前にいるなんて、な」
愛しいものを見るような、熱い視線が私を包む。
「絶対に、探し出して側に置くって決めてた。 これはもう、神が与えてくれた奇跡だ」
(か、神?! 女神に引き続き、壮大な…… これまた壮大な…… )
アミールは私の手をそっと握り直すと、今度はさっきよりも、ずっと、ずっと長いキスを掌に落とした。
「俺のイラーハ、礼を言う」
(……ただ仕事をしているだけなのに、女神とか言われちゃうなんて、嬉しいけど、なんだか申し訳ないな…… でも、こっちの人は、神様を大切にしているから、そう言うものなのかも、知れないな…… )
「何を考えてる?」
アミールは顔を近づけて、私をの顔を覗き込む。
「え……と、神様の事……? 」
素直に答えると、
「ダメだ。一花が考えて良い男は、俺だけだ。たとえ神でも許せない」
何だか怖い事を言われて、
「助けて!」
と、カミールに視線を向けると、彼はニヨニヨとした笑みを浮かべ、私達を見ていた。
(……同じ顔のイケメンなのに、カミールの微笑みにはトキメがないのは、何故なのかしら……? )