俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
病室からは、バリトンボイスをいつもよりも低くさせ、怒りを含んだ声のアミールと、アイシャの話し声が漏れて来た。
ガチャガチャと、ドアを開けようとする音がして、慌てた看護師が、早口で、出ては行けない! と、現地の言葉を捲し立てた。
「クソッ!」
吐き出す様な言葉と共に、ドンッと、ドアを叩く音が響いた。
「一花!」
アミールに呼ばれ、急配置換えの事を、自分の口から伝えたいと思い、
「……お二人に挨拶をしてもよろしいですか?」
病室の方に顔を向けると、
「必要ない」
現地スタッフは、面倒臭そうに、言い放った。
「あ、あの、なんで急に、配置換えなんて…… 」
説明もされず、戸惑う私に、現地スタッフは片眉を上げると、先程よりも殊更、不快そうな視線を向けて来た。
「……貴方が、看護師の立場を利用して、お二人に迫っていると、苦情があった」
「迫る……?」
訳がわからず、目をキョロキョロと、泳がせ、そして現地スタッフの顔を見た。
軽蔑する様な、嘲笑う様な、何とも言えない表情の現地スタッフに、口を窄む。
(一体誰が、そんな事を…… )
心あたりは一人しかいない。
(……こないだのアレで……? いや、まさかね…… )