俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました


「好きって、何が?」

「柴田さん! 誰かをす、す、好きになるって、どんな感じ?!」

 思わず、目の前の柴田に助けを求めて、ガシッと、力強く彼女の手を掴むと、前のめりに尋ねた。

「へ?!…… 」

 口を開けて放心状態の彼女は10秒程停止し、直さま、復活した。

「どうしたの? 今時、中学生でも聞かない様な事、言って。 純情か?!」

 アハハハハーッと笑ったが、私の余裕のない、真剣な顔を見て彼女は呟いた。

「え? え?! マジ?」

 コクコクッと、真っ赤になって必死に頷く。

「あー……なんか、ごめん…… ?」

 残念で気の毒な子を見る様な、視線を私に向けた。


 両親からの愛情を知らない私は、施設の子達が両親にあった後、キラキラ輝くのを、羨ましいとは思っていたが、それが親から与えられる、愛情を感じて得られるものだと言う事が、よくわからなかった。

 わからないと言うよりは、知らない、と言う方が正しい。

 親からの愛情を、受けた事がないのだから仕方がない。

 伊織から無条件に守って貰って、大切にされているのは、いつも感じている。

 きっと、これが一番親から与えられる愛情、と言うものに近い感情だと思う。

 

「好きって気持ちか…… んー、そうだなぁ…… 自分でも気がつかないうちに、その人の事考えてたり、顔が浮かんだり、会いたいなぁって思って、こう、キュウーッて心が切なくなったりとか? 姿を見かけたらその日はもうハッピーってなって、ホッコリするの」

「顔が浮かんだり、会いたい…… 」

 アミールの顔を思い浮かべ、ホッコリ暖かい気持ちが、湧き上がって頬が緩む。

「ふふふっ…… 」

「で、これが曲者で、好きな人が他の女と仲良いとか、出かけたとか、誰それが好きらしいとか聞いたりしするでしょ。 そうすると、落ち込んだり、相手の女にイライラしたり、モヤモヤしたりとか、ブルーってなるの。それも全部、好きって気持ちからなんだよ」

 はあーーっと柴田は深く息を吐いて、

「恋って本当厄介だ」

と、笑った。

「イライラ、モヤモヤ…… 」

 アミールとアイシャが仲良くしている所を思い浮かべると、あの気持ちの悪いモヤモヤとしたものが、身体の奥底から湧き上がってくる。

 眉毛を寄せ、口を真一文字にグッと引き結び固まる私に、

「相葉ちゃん、さっきからしているその百面相、誰の事を思い浮かべてるの? その人の事考えてる相葉ちゃん、どっから見ても恋する乙女だよ」

 言われて、またアミールの事を考えていた事にハッとする。

「いつも、作業療法士の伊織さんと一緒だから、彼と付き合ってるんだと思ってたけど、違うんだ」

「伊織? 違う違う! 彼は身内みたいなものだから」

 顔の前で手を降って、慌てて否定する。

「そうなんだ。 んじゃ尚更、その好きな人に会うために、早く日本に帰らないとね」

 グフフッ…… と笑い、日本に思い人がいると勘違いした柴田は、

「そうそう、帰国前だから明日は一日オフだって。時間もないし、早く荷物纏めなよ」

そう言い残すと、またね、と仕事に戻って行った。
 
(好きな人…… 好きな人…… )

 彼女の言葉を何度繰り返してみても、浮かぶのは、蕩けるような熱い視線を向ける、アミールの顔だ。

(…… ひゃあああああぁっー! わ、わ、私やっぱりアミールさんの事好きなの?! この感情が恋?!)

 ワタワタと落ち着かない。

(私も今、施設の子達みたくキラキラしてるの?)
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