俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「相葉さん」
不意に呼ばれて、顔を上げると現地スタッフが目の前にいた。
もしかして、またアミールとアイシャの事かとモヤモヤしたが、彼から告げられたのは思いもしない事だった。
バタバタと小走りで、一般病棟と富裕層のいる病棟の間にあるエントランスへ向かうと、数日前まで毎日見ていた、ブルートパーズの瞳の男が三日月型に目を細め、高級感溢れるネイビーのスーツを着こなした男が立っていた。
行き交う看護師や人々がチラチラッと彼を盗み見て行く。
私を見付けると、右手を挙げて
「一花!」
と煌びやかな笑顔を向ける。
「カミール! お久しぶりです。 その後体調はどうですか? 」
「一花の献身的な看護でこの通り」
パチンッと片目を瞑る。
(うぅっ、このイケメンめー! 自分の魅力を良くわかってますね。 もう、本当、ね、アミールと同じ顔で、そんな事しないでよーっ)
不覚にもドキッと、少しトキメイてしまう。
「……それで、御用とは? 」
気を取り直し、何でしょう? と首を傾げる。
「ん、本当はもっと早く、会いに来るつもりだったんだけど、僕も色々とやる事があってね、遅くなってしまったよ、ごめんね」
手を取られ、ポンッと、プラスチックのカードを渡された。