俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
それぞれの想い
休憩スペースで、アミールに追い詰められた私は一度落ち着こうと、スウーッと深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。
「…… 逢いたかった…… 」
アミールが、喉の奥から搾り出すような切ない声で、呟いた。
(…… 私は逢いたくなかった…… 化粧っ気もない隈の出来た顔に、束ねただけの艶のない髪。 荒れてガサガサの手。 元々、そんなにお手入れしていた訳じゃないけれど、こんな私見られたくなかった…… )
手を伸ばし、私に触れようとして、ジリジリと間を詰めてくる彼の胸に手を当て、それ以上、近づくな、と牽制する。
「な……っ 」
一瞬戸惑い目を見開いたが、アミールは、なおも詰め寄って来た。
「…… 仕事中なの 」
廊下を行き交う人達が、チラチラッと、二人の様子を盗み見る。
私の静止にアミールはピタリッと、その場に足を止める。
「……今夜、今夜時間をくれ。 話がしたい」
三年前よりも、長めになった髪に、精悍さを増した、左右の均整の取れた顔と身体。
高級感溢れるスーツを、見事に着こなしている姿は、カッコ良く、相変わらず私とは、別世界の人間だ。
忘れられたと思ったのにな……。 会った途端、こんなに余裕がなくなるなんて…… 。 一途な自分に嫌気が差してハハッと、小さく自嘲する。
「……夜は、無理だわ」
特別出勤以外は、夜勤を入れていない。
なるべく、子供達と一緒に居たいからだ。
夜に会うとなったら、子供達も連れて行かなくてはならない。
一夫多妻制を受け入れられなくて、勝手に居なくなって、黙って子供達を産んだ。
もう二度と会うことはないと思ってたのに……
「…… 私は話す事なんて何も、ないわ。 ……お願い、構わないで…… 」