まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~
2
「ふんふんふ~ん♪」
その日、私はいつものように特別教室へ向かおうとしていた。
そう、一人で。
友達は相変わらずできていない。
が、もう焦らないことに決めた。
諦めたわけではないのだ。決して。
ただ、自分から近寄っても、
『!?寒気がする!!』
と、心霊現象と間違えられて逃げられ。
落とし物を口実に話しかけると、
『あ、ありが……ひょおぉぉ!?冷たい!!』
手品師か何かかと、一線を引かれ。
若干クラスの腫れ物のようになってしまっただけなのだ。
ということで、自分からアクションを起こすのは、もうおしまいにした。
好きな時に、必要な時に、声をかけて欲しい。
私はいつでもみんなの陰に潜んでいるわ。
ふふふ。
「ふふふふふふ、ぶっ!!」
一人笑いを浮かべて廊下の角を曲がろうとした時。
同時に向こうから曲がってきた人影と衝突した。
私の鼻が盛大に、醜く歪んだ。
たまらず後ろに数歩下がり、鼻の位置を確認する。
よかった。形状記憶は優秀だ。
「あの、ごめんなさい、前をよく見てなくて」
「いや、俺も……」
微かに涙目になりながら、私はぶつかった人物を見る。
すると、
「あ」
「…………………」
そこに立っていたのは、愛しい元旦那様。
今日も今日とて眩い美貌が、相手が私と知ると絶対零度の眼差しになって見下ろしてきた。
うぅん。痺れる♡
バレないように内心はぁはぁしていると、彼がその顔を苦々しげに歪めた。
「よそ見してんな」
「………ごめんなさい」
努めて無表情に答えれば、彼は一層眉を寄せた。
そして、何を考えたのか、白くて細長い指をこちらへ伸ばしてくる。