まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~






「ふんふんふ~ん♪」


その日、私はいつものように特別教室へ向かおうとしていた。


そう、一人で。

友達は相変わらずできていない。


が、もう焦らないことに決めた。

諦めたわけではないのだ。決して。


ただ、自分から近寄っても、


『!?寒気がする!!』


と、心霊現象と間違えられて逃げられ。


落とし物を口実に話しかけると、


『あ、ありが……ひょおぉぉ!?冷たい!!』


手品師か何かかと、一線を引かれ。


若干クラスの腫れ物のようになってしまっただけなのだ。


ということで、自分からアクションを起こすのは、もうおしまいにした。


好きな時に、必要な時に、声をかけて欲しい。

私はいつでもみんなの陰に潜んでいるわ。

ふふふ。


「ふふふふふふ、ぶっ!!」


一人笑いを浮かべて廊下の角を曲がろうとした時。

同時に向こうから曲がってきた人影と衝突した。


私の鼻が盛大に、醜く歪んだ。

たまらず後ろに数歩下がり、鼻の位置を確認する。

よかった。形状記憶は優秀だ。


「あの、ごめんなさい、前をよく見てなくて」

「いや、俺も……」


微かに涙目になりながら、私はぶつかった人物を見る。

すると、


「あ」

「…………………」


そこに立っていたのは、愛しい元旦那様。


今日も今日とて眩い美貌が、相手が私と知ると絶対零度の眼差しになって見下ろしてきた。

うぅん。痺れる♡


バレないように内心はぁはぁしていると、彼がその顔を苦々しげに歪めた。


「よそ見してんな」

「………ごめんなさい」


努めて無表情に答えれば、彼は一層眉を寄せた。


そして、何を考えたのか、白くて細長い指をこちらへ伸ばしてくる。



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