まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~
『そりゃ、私は全然家事も出来ないし。頼りないし。普通の人と違うかもしれないけどっ…』
『違うんです、珠緒さんっ…』
『私なりに、まどかの役に立てるように頑張ってるつもりなのっ…』
『そんなこと知ってます!!』
『っ!』
途端、背中に熱が触れた。
後ろから抱きしめられているのだと分かったのは、彼の息遣いが耳元で感じられたから。
『まど…』
『珠緒さんが僕のために色々頑張ってくれていることなんて、とうの昔に知っています。そのことで不満に思ったりなんかしてないし、するわけないです!』
背後からの言葉に、私は尋ねた。
『……料理が下手でも?』
『珠緒さんが僕のために作ってくれたものなら、どんな料理でも御馳走です!』
『……洗濯物、ビヨビヨに伸ばしちゃっても?』
『珠緒さんにも伸びしろがあるってことじゃないですか!』
『………縫物できないよ』
『一緒に縫えばいいし、僕が珠緒さんに縫いたいだけなんです。ていうか、それこそあなたが作ってくれた着物なら、たとえ袖がなくたって、どんなものでも羽織って見せますよ!』
『………………』
ひとまず、彼が私のする家事に対して不満を抱いていないことは分かった。
……声が真剣すぎた。
首元に優しく回っている彼の腕に手を添える。
『………じゃあ、なんでそんな不安になるの』
『…それは』
いくらか躊躇った後、彼はゆっくりと言った。