京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
祖父は四年前から朔埜が史織に関心を示した事を知っている。その頃朔埜は四ノ宮家の引き継ぎを祖父から受け始め、忙しかった。だから意識しなくてもその内忘れるだろうと、自分の感情を押し込め有耶無耶にしようと目論んだ。
けれどその思惑はまんまと外れ、むしろ気付けば意識しないと思い出すようになっていく。そんな自分に驚きと共に戸惑いも感じた。
四ノ宮家を貰う事になり、プレッシャーから逃げたかったのかもしれない。けれどそれがたった一度会っただけの女に向けられるとは思いもしなかった。
一緒に気晴らしをしてくれるような女なら他にもいるのに、何故かそちらは全く気乗りしなくなってしまった。
そうして自分が彼女を忘れられないのだと気付き、結局朔埜は四ノ宮の力を使って女の素性を探らせた。
千田 史織
その下に書かれた彼女の経歴を見た朔埜は、思わず口元を綻ばせた。
彼女はあの千田家の令嬢の一人だ。
実権を握らない親類の括りではあるが、千田家の現当主である会頭の、その孫に変わりはない。