京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
 
 朔埜との時間は楽しかった。
 住む世界の違う人間と言うやつだろう。良家の子女との付き合いがつまらなく感じる程、彼の見せる世界は非常に魅力的だった。
(賢いのね、一つ学ぶだけで十吸収してるみたい)
 育ちは平凡……というより虐げられていたらしいのに。産まれた時から知っているかのように、正しい道を辿っていく。
(大旦那様がこの人を見込んだのも分かる、多分この人……)

「面白いか?」
 淡々と課題をこなしていく朔埜を肘を突いて眺めていると、朔埜がこちらに顔を向ける。
 朔埜の様子を観察していたけれど、ずっと横顔を見つめられる方は気になって仕方がないだろう。
 乃々夏はにっこりと笑みを返した。
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