京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「……なる」
きちんと覚悟を持ってこちらを見つめかえす朔埜の瞳はとても素敵で、乃々夏の心を蕩かしてくれるけれど……
「じゃあ、あたしを好きになったらプロポーズしてね〜」
そう言って手を離すと朔埜は驚いたような、戸惑ったような顔でこちらを見つめ返した。
「結婚するなら覚悟が必要でしょう? それはきちんと自分で持って頂戴」
この人が自分の夫となるなら、乃々夏の人生はきっと彩鮮やかな世界となる。けれど、乃々夏はそれが幻想のように淡いものだと知っている。
欲しい物ほど、満足するのはほんの一瞬。
期待していた分、思っていたのと違うと失望する気持ちは、皮算用の比ではない。
そんな思いはしたくない。
親の為とか親のせいとかじゃなく、お互いを見据えて決めた未来が欲しい。
乃々夏もまた、母のようになりたくないのだから。
だから……
(ちゃんと、あたしのものになって欲しいわ)