京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「──本当に来るのかな?」
「……来るって、俺の事が好きだって美那が言ってたんだから」
「こんなところに、のこのこと〜?」
「だからいいんだろ、絶対黙っててくれるよ」
 
 聞き覚えのある声に気付いたのと、複数いると思われる男性の不穏な会話に、息を飲んだのはほぼ同時だった。
 
「来るって事はOKって事だろ、それにさ……」
(……藤本君?)
 史織はぎくしゃくと身を屈め、声のする方を探った。
「何か家が大変みたいだし、慰めてあれげれば喜ぶだろ。気晴らししたいって誘いに乗ったんだから、向こうも分かってるさ」

「ふーん、苦労してる子なんだ。助けを求める相手がいないなんて、可哀想だよな〜」
「だから俺らが助けてあげるんだろ」

「元が箱入りだからチョロいんだよ。大学の時俺に好意があるって聞いてたけど、家が金持ちって聞いてたからさ。手出せなかったんだよなあ……でも今はその家を追い出されたみたいだし。何の障害も無くなって万々歳だな」
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