京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
(え、何なのこれ……)
史織の頭は混乱を極めた。
藤本が史織の今の状況を変な風に捉えるのも気になるし、それに……
(……知ってたんだ)
史織の好意を。
知っててそんな風に思っていた彼に、今更ながら傷ついている自分がいる。
どうなりたいと思っていた訳でもないけれど。こんな風に思われて平然といられる程、強い心をもっていない……
ああそれよりこんな人だったのかと頭を抱える。学生時代の彼は好青年で、誰にでも優しくて公平で。だから……
「そういえば美那ちゃんだっけ? お前に執着してた彼女。お前の周りの女をいちいち牽制してた、こえー女。もう別れたのか?」
その言葉に藤本は軽く息を吐いた。
「まあね、俺に合わせて都合よく働いてくれたから側に置いてたんだけど。流石にウザくなってきて、あいつの妹嵌めてから会ってないよ。まあ、あいつも加担したようなもんだし。今はお互い平和に過ごせるんだから良い関係ってやつだよ」
はははと起きる笑いに目を回しそうになる。