京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 痛い。
 倒れた時に圧迫された胸が痛み、浅い呼吸を繰り返す。
 先程目の前に現れた男が史織の襟首を掴み、力任せに放ったらしい。ふらつく頭を持ち上げれば藤本と、その後から見知らぬ男が複数出てくるのが見えてぞっとした。

「もしかして聞いちゃった?」
 いつものように優しい笑みを浮かべる藤本に、泣きそうになってしまう。
「あ〜、ほら。藤本、駄目だろ〜泣かせたら」
「泣いてる女の方が好きなくせに……ねえ、千田さんも大変だったんだろ? 俺たちも一週間も研修で息が詰まって辛くてさ。一緒に息抜きしようよ、って話なんだよ」
 
 ──本当に、ずっとこんな人だったんだろうか。
 自分はどれだけ見る目が無いんだろう……

「嫌、最低、嫌い……警察に言うわ」
「警察なんて、困るのは千田さんでしょ? 何を証拠に出すつもりなの? 裁判で全部証言しなきゃいけないんだよ、出来るのかな?
 気持ちよかった〜、てちゃんと本当の事も言わなきゃいけないんだよ、言える?」
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