京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
にやにやと笑う藤本に──目の前の嫌悪を耐えるように顔を顰める。何とか逃げられないかと、じりじりと後ろに下がる。
三芳辺りが都合良く用事でも言いつけに探しに来てくれないかと思うが、勤務明けに仕事を言い渡された事は無いし、緊急の業務連絡を受けた事は無い。
「あなたたち、初犯じゃないでしょう……」
思わず口にしたそれは、時間稼ぎというには拙い。けれど妙に腑に落ちた。
史織を囲む男は全部で四人。そうでなければ旅先で、これだけの頭数がいるのに、誰も諌めず、当然のように纏まるだろうか。史織に目を付けなければ、他の旅館従業員か、社内の女性に危害を加えるつもりだったのかもしれない。
「そんな事、千田さんには関係ないでしょう? あ、でもこれからは会いたいから、東京まで遊びに来て欲しいな」