京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「……?」
 はっと息を飲む気配と共に項垂れていた頭を上げた。
 自分の声ではない。言おうと思ったけれど、それを言ったのは別の誰か。

 そこには朔埜が立っていた。
 スマホを片手に。息を切らせて……

「若旦那様……」
 そう口にすれば誰かの舌打ちが聞こえて来た。
 すかさず藤本が人当たりの良い顔で挨拶を始める。
「やあ、この旅館のご当主ですよね。何か誤解されているようですが……」
 だが全て言い終わる前に藤本の顔が、顔半分に朔埜の拳がめり込み吹き飛んでいった──……
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