京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「──あなた方は何を言ってるんだ?」
けれど喧々轟々と喚く男たちを一投で断ち切るような、凛とした声をそのままに、彼らに白けた目を向けて、朔埜は史織の肩を抱いた。
「彼女と待ち合わせをしていたのは──俺ですが?」
(……はい?)
流石に声には出せないが……目は丸くなった気がする……
史織が驚きに固まっている事など気にも留めず、話は続いていく。
「──ああ確かに。厄介な男に声を掛けられて、けれど客相手に断るのも角が立つからと、相談を受けてました。今日は仕事終わりに待ち合わせをして、庭園を散策をする予定やったんだやけどな……鉢合わせてこんな目に合わされるなんて……」
そう言って切なそうに史織を見る眼差しに戸惑ってしまう。
(え、演技……と、口八丁が凄い……)
「っはあ? 藤本こいつ、やっぱ疑われてたんじゃねーか!」
「ふざけんな、俺たちは知らなかったんだ。なあ、本当だよ、頼まれたんだ」
「──……」
疑う事もなく怒り出し、罵り合いを始める彼らに、言いたい事がなくも無いが……代わりに史織の肩を掴んでいた朔埜の手にぐっと力がを篭められた。