京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
(怒っている、気がする……)
当たり前だけど。
だって嘘ばっかりだ。史織の事も、藤本の事も、挙句一人に全て押しつけこの場から逃げおおせようと喚いている。
自分が嘘を平気でつける人間だからこそ、他人の虚言に容易く惑わされてしまう。きっと事実なんて、この人たちにとって都合の良い事だけでいいのだろう。
浅ましく、小狡く、悪質な……こんな人たちを世間に野放しにしておくなんて許せない。
史織にもふつふつと怒りが込み上げてくる。
その結果、体裁を考える必要より、感情的なものが勝ってしまった。
「嘘よ!」
そう叫ぶ史織に、男たちは嫌らしい笑みを向けてきた。
「……てかさ、苦労してるって聞いてたけど、もう別の男を誑かして、楽しくやってるみたいじゃねーか」
「そうだ、さっきだって俺たちに誘われて満更でも無さそうだったしな」
「……っな、」
──何て事を言うんだろう。
朔埜に意味深に視線を送りながら、得意気に話す男に愕然としていると、再び男の顔に拳がめり込んだ。
「……え」