京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
青褪める男たちは朔埜と、史織のスマホが飛んで行った方を交互に見て口をぱくぱくさせている。
そうなのだ。
史織が押したアドレスは旅館の名前になっていたものの、実際は防犯ブザーの役割を果たす番号だった。
「す、すまなかった! 悪ふざけが過ぎたんだよ! 旅行に来てさ、な?」
「そ、そうだよ! あんただって分かってただろう? でも次からは誤解されるような行動は──」
三度。
男の顔に拳がめり込み、吹き飛んで行った。
……なんかもう、人の顔が半分ひしゃげて吹き飛んで行くのに見慣れてしまっている自分がいる。
残りの一人と史織が呆然としていると同時に、遠くにサイレンの音が聞こえてきた。
「ああ、来たか。遅いわ」
「えっ、ほんとに?」
ぽかんと呟く。ブラフでは無かったのか……
研修中にスマホの使い方は三芳にしっかりと叩き込まれていた。