京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

『万が一の時はこれを押しなさい』

 他にも不測の事態による緊急連絡があれば、この番号で誰かが対応、指示する。
 電話口で事情を説明すれば警察への通報は取り止められるようにもなっているから、遠慮せず必ず押すように、と。
 史織が連絡先をタップした時点で旅館に防犯通知がいっている。……ただ半信半疑ではあったので不安はあったが……
 
「なっ、嘘だろう? まじかよ?!」
「冗談やのうて、あんたらはこのまま研修中に起きた不祥事が元で、仕事はクビや」
「な、な……」
 ずりずりと後退る男に朔埜が追い討ちをかける。
「逃げても無駄やで、河井はん」
「なあ!?」

 史織も一緒になって驚く。
 ……前も思ったが、朔埜は宿泊客全員の顔と名前を覚えているのだろうか……
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