京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
 
 朔埜はさも意外そうに目を丸くする。
「なんや、知らんのか? 東京もんは常識が薄いのう」
 そう言って朔埜は綺麗な顔をずいと河井に近づけ、気のせいか顔を赤らめる河井に挑発的な笑みを浮かべてみせた。
「──宿の主人に知らないものは無いんや」

「な、なんだよそれ! 意味分かんねーよ!」
 喚く男を更に追い詰めるように、行燈を掲げる三芳の姿が見えた。その後ろには警察官の姿が付き従っている。

「ひ、ひいっ!」
 警官たちは、がたがた震える河井を見て、地べたで伸びている男三人に微妙な顔をしてから、諦めたように首を振り応援を呼び始めた。
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