京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

2. 習性


 どこかの部屋に辿り着き、降ろされた場所は柔らかい。
「落ちるなよ」
 その台詞からこれはソファなのだと理解した。

 そろっと外された羽織の向こうに、痛ましい顔をした朔埜が見えた。
「大丈夫か……」
「……はい」

 そう言いながらも、離れていく手を寂しく感じてしまう自分がいる。
「すまんな、怖いやろ。俺は外すから、誰か女性を……」
「だ、いじょうぶです。その、若旦那様のお顔は中性的ですし、それほど怖くは……」

 ぴき

 と目の前で空気が張り詰めた音が聞こえた。
「……お前には俺が女に見えるのか?」
 何だろう、笑顔に迫力が感じられる気がする。

「い、いえ。そういう訳ではなくて、その……若旦那様は温情ある方ですので、怖くないと言う意味です」
 こちらも負けじと笑顔で返せば、不満そうに溜息を吐いた。
「……俺の顔なんてどうでもいいくせに」
「えーと、そんな事は……ごさ綺麗な顔だと思ったので、つい。嫌でしたか?」
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