京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
藤本の事は警戒していたのに……
あいつが勤める会社の研修にと、凛嶺旅館を口利きをしたのは乃々夏だ。どうせ県警から要請があったのだろう。だから元々罠に掛けるつもりで呼び込んだとしても、朔埜に否やはない。けれど史織が来る事は知らなかった。
怒りはある。
それは自分に対するもの。
目を逸らしていたせいで大事なものを危険に晒した。
そしてこんな後悔はもうできないと、やっと悟った。
気付くのが遅くなったけれど、言わなければならない。もう自分は乃々夏を幸せには出来ないから。