京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「すまんかったの、怖い目に合わせてしまって」
 開口第一声が謝罪の言葉で驚いて、史織は慌てて手を振り否定した。
「いえ! 旅館のシステムのお陰で助かりました。ご配慮ありがとうございます」

 再び頭を下げるも、水葉は苦笑を返すのみだ。
 まあ確かに怖かったけれど……

 ホールへ向かう道を散歩道代わりに。
 少しばかり回り道を選び、水葉と二人そぞろ歩く。
 
「史織さん」

 ぴくりと身体が反応する。
 史織の名前。やはり気付いていたのだ。

「名前を偽り、申し訳ありません……」
「良い事では無いが、悪くも無かった。実はあなたが来てくれるのではないかと、儂も少し期待していたから」
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