京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「史織」
そう言ってこちらに急ぐ朔埜にびくっと足が後ろに下がる。
こんなところまで追いかけて来た事を叱られたりしたら……謝りたいなんて思っていたものの、結局は会いたかっただと見透かされたらどうしよう。
それでいて、叱られたらきっと凄く落ち込む自分が予測できるのだから、やばいと思ってしまう。
戸惑っている間に朔埜が眼前に迫り、気付けば背中に手を回されて、くるりと反転されていた。
「戻れ」
「……?」
身を固くしたまま唐突に周り右をされて史織は混乱する。
「いいから戻れ。早よ」