京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 場の雰囲気をぶち壊す低い声に、昂良の身体がギクリと固まる。
「な、なんだって……?」
「邪魔や、とっとと出てけ」
 見れば妖艶な笑みはいつの間にやら歪な笑みになっていた。
「えっ」
 動けないまま、振り上げられる竹箒を呆然と見上げていると、後ろから強く手を引かれた。

「も〜、朔埜ったら〜、お友達に意地悪しちゃ駄目って言ってるでしょ〜」
 驚きに顔を上げると、そこには可愛らしい女の子が昂良の腕を掴み、佇んでいた。
「……意地悪って何やねん、これはただの躾や」
「そんな躾はいけません〜」

 腕を引かれるまま数歩下がって、昂良は自分の腕に絡まる女の子を改めて振り返る。
 ──凄く可愛い。
 昂良が付き合ってきた子は常に学校で一番可愛い子だったけど。見慣れたそれよりずっと垢抜けたその子に、込み上げた言葉を飲み込み視線を彷徨わせた。
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