京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
その女の子は昂良からするりと離れ、親しげに朔埜の腕に擦り寄る。
「朔埜〜、旦那様が呼んでるよ〜、私も学校の様子聞きたいって呼ばれて来たんだ〜」
女の子の台詞にけっ、と悪態をつきつつも、兄──朔埜は嫌がる風もない。
「面倒臭。お前も呼ばれたからってほいほい来んの止めや」
「も〜、嬉しいくせに〜、素直じゃないんだから〜」
その子がにこにこと朔埜の頬をつつき、朔埜は視線だけ逸らしているが、拒みはしない。仲が良い。そんな印象を受ける。
そんなやりとりに一区切りついた彼女がくるりとこちらを向いた。
にこりと笑うその姿にどきりと胸が鳴るのに、その寄り添う相手に複雑な気持ちになる。
「ごめんなさい〜、ここは関係者以外立居入り禁止なんです〜」
その台詞を彼女の口から聞けば、頭を叩かれたような衝撃に襲われる⁉︎。
「ぼ、僕は……か、関係……」
「言うても無駄や、乃々夏。こーゆーんは力ずくで追い出せばええねん」
必死に紡ぐ言葉を無視し、にべもなく朔埜が答える。
「も〜、駄目だってば〜」
それを制しつつも朔埜に戯れつく彼女に昂良はむっと顔を顰めた。
そんな昂良の様子に気付いた乃々夏と呼ばれた少女がさっと朔埜から手を離す。