京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「はじめまして。先程は大変失礼しました」
ぺこりと、史織は急いで頭を下げた。
すると昂良は慌てて手を振って否定してくれた。
「いいえ、驚かれたでしょう? 恥ずかしながら親父と兄は仲が良いとは言えなくて。すみません、人前でもあんな態度を取るんですよ」
「あ、いえ……」
先程水葉の話にあった父親だろう。
朔埜の事を思い、胸が痛んだ。
改めて昂良を見上げる。
朔埜は涼しげな……というより一見冷たい印象がある。しかし昂良は何だか真逆の雰囲気だ。
仕立ての良いスーツに身を包み、やや癖のある淡い栗色の髪は品よく纏められている。きっちり箱に納められ育てられた、正に箱入り息子という感じだ。
(兄弟なのに随分違う)
それが何だか悲しくて、史織はふと俯いた。
それにしても会話に困ってしまう。こういう時気の利いた事でも言えればいいんだけれど。結局何も言えないまま、曖昧に微笑んでやりすごす。