京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

3. 切望


 昂良はずっと不満だった。
 自分の周りにあるものが。
 当然のように受け取ってきたものは、全部自分が望んだものでも、頼んだ事でもない。

 彼らは昂良に擦り寄れば、得られる恩恵がある。だら近付いてくるんだと、気付いてしまった。
 それまで鮮やかだった自分の世界が壊れた瞬間。

 少し仲良く接するだけで、施しを受けたように喜ぶ彼らに気持ちが悪く思う。こんなものが自分が抱え込み、囲まれ、満足していた世界なのかと。
 急に世界が黒白に変わってしまった。

 それから昂良は自分に関心を示さないものを探すようになった。友人も、金持ちは嫌いだとあけすけに嫌悪を示す輩を。恋人も、昂良は好みじゃない、釣り合わないと言って距離を取る者を。
 けれど駄目だった。
 気を許すと皆昂良に依存する。
 あれだけ置こうとしていた距離を詰め、笑顔で自分に擦り寄ってくる。

 あんなに勉強が大事だと言っていた彼女も、もう昂良から離れない。成績が落ちるより昂良に捨てられるのが嫌だと、今では自分の上で毎日のように腰を振っている。
 ……ああ、もう嫌だ。
 欲しいのはこんな物じゃないのに。

 兄のように何も与えられない存在だったら、何でも有り難かだって受け取るのだろうか。
 旅館で使用人のように働く事も、親が決めた婚約者にも納得し、受け入れて……幸せだと思えただろうか。
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