京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 そう言って笑う秘書に昂良は目を丸くした。
「初恋?」
「ええ、幻影のようなものでしょう? それに呆けているそうですよ」
「……」

 初恋なんて、昂良には覚えがない。
 恋らしきものは沢山してきたけど、どれが初恋だったかと言われたら分からない。
 本当にどうしてそんなに、兄ばかり……
 
「まあ、結果ただの十九歳の子供というのが結論です。将来を約束された昂良さんが気にするようなものは、何もありませんでしたよ」
「そうですか……」
 どうして誰も気付かないんだろう。
「あんな旅館くらい、くれてあげれば良いでしょう」
 そんな旅館を貰う、兄の方がずっと恵まれているのに。
「もし、その……」
「え?」
「あ、いや……その、兄の相手を調べる事は、できませんよね?」
 何を言い出すのかと、自分でも思う。けれど止まらなかった。もしかしたら、もしかしたらの話だから。
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