京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 それから暫くして挾田がやっと掴んだのが、千田家の令嬢というものだった。千田は創業者が一代で成り上がった家だけれど、今は経済界でも無視出来ない程の影響力を持つ。その創業者には年頃の孫が何人かいた。

「この中のどれか……」
「そうですね、でもこの人たちの誰より昂良さんがお付き合いしている相手の方が、ずっと素敵ですよ」
 挾田は褒める訳でもお世辞を言う訳でもなく、本心でそう言っているのだろう。

 彼女もまたどこぞの令嬢で、昂良に興味を示さない人だった。だから一緒にいたいと思ったのに、結局今迄の彼女と同じ。昂良にのめり込み、今では結婚のふた文字に目をぎらつかせている。
 もうそんな歳になったのかと、ふと思い立ち、父の事が頭を掠めた。
(今の彼女には父母も納得しているけど)
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