京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

『あなたは自分にのめり込む女性を、可愛いと思わないんですか?』
 お下がりの彼女に満足したらしい。不思議そうな顔をする男に昂良は鼻を鳴らした。
『そう思うなら、あんたは何で色んな女に手を出すんだよ?』
『沢山の可愛いを知りたいんですよ』
 にやりと笑う男に昂良の理解はやはり追いつかない。
『全部同じでうんざりするだろうに』
『しませんね、毎回どきどきするんで』
『どきどきか……』
『しませんか?』
『よく分からない』
 そう言うと男は肩を竦めた。
『勿体無い、それだけ恵まれているのに。そのご自身の価値を分かってもいないなんて』
『価値……か』

 父母のような価値観は分からない。
 分からないし、自分で決められないなら、他人を物差しにするのもありだろう。

 兄の初恋。

 彼女を手に入れれば、あの兄は自分をどんな目で見るだろう。もしかしたら彼女の心も兄に残ったまま、自分を受け入れる事になるかもしれない。
 そう思うとぞくぞくする。
(どきどきなんて、目じゃない)
 やっと目にした充実感に、昂良は喜びに震えた。
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