京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
4. 困惑
「どうですか、この辺の紅葉はとても綺麗で……」
そう言って振り返れば、目を細めた昂良と目が合った。
それが何となく居た堪れずに、つい言葉が途切れてしまう。
「そうですね」
そう言って隣に立つ昂良から逃げるように一歩離れる。
不思議な事にこの人はこうして距離を取ろうとすると喜び、近付いてくるのだ。
(変わった人だなあ……私が遠慮してるように見えるのかしら……)
にこにこ笑う昂良に愛想笑いを返し、史織は俯きながら先導する。
「ねえ、史織さん。知ってます? 麻弥子さんと兄のお見合いの件は白紙になったんですよ」
「あ、」
先程朔埜が断ると言っていた話。もう話が纏ってしまったのだろうか。流石にこれには驚きを隠せない。