京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「史織さん!」
追いかけてくる声を聞きながら、史織はとにかく走った。後ろに迫る昂良を躱したくて、整えられた樹々の隙間に身体を捩じ込み垣根を飛び越え先を急ぐ。
ようやっと辿り着いた竹林を進み奥へ奥へと進んで行けば、見知らぬ場所へと辿り着いた。
「あ……れ……」
違う、ここは自分の部屋へ続く道では無い。
そこには小さな庵がぽつりと一つ、佇んでいた。
どうしようかと躊躇うも、よく見れば中から煙が立ち上っている。誰かいるのかもしれない。
一縷の望みを掛けて、史織は庵に飛び込んだ。