京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
紅葉の時期なだけあって、人の行き交いは多い。
けれど、どう声を掛けたらいいのか。見ず知らずの人へ助けを求める声を上げられない。
(靴屋なんて、開いてるのかな? でも場所も分からないし、そもそもどうやってここから移動したらいいんだろう……)
お気に入りのスニーカーは約四年前に購入したものだ。奮発した上気に入っていて、汚したくなく無かったから。ここぞという時に引っ張りだしたらこの様。見かけは綺麗なのに……中身はすっかり古くなっていたようだ。
もう諦めて靴下で歩こうと覚悟を決めた瞬間、声が掛かった。
「Excuse me, could you tell me the way?」
見上げて史織は縮こまる。
(ええっ!?)
流石は古都京都。国際的な観光地である。
そこには外国人観光客が二名、史織に向かってガイドブックを開いて何やら訴えている。
とはいえ史織は英語を話せない。
固まる史織に何を思ったのか、男性の二人連れの外国人観光客は更に地図を指し示しあれこれ話し掛けてきた。
観光マップを見るに、史織もチェックしている名所なのは分かるのだが。路線とかバスの系統までいくとちんぷんかんぷんである。しかもこんな状況で、余裕なんて全く無いのに……
「そ、ソーリー。アイキャンとスピーク……」
身振り手振りで、分からないと訴えるも伝わっているのか、いないのか……体格が良く迫力のある顔立ちに気後れしてしまう。
史織はばたばたと手を振って分からないアピールを頑張ったが、男性たちはなんかHAHAHAみたいな感じで笑うだけだ。