京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

6. 助っ人


 駆け込んだ庵の中、土間の向こうには仕切りがあった。
 史織は躊躇いながら、その仕切りに手を掛ける。
「すみません!」
 とは言え勢いに任せ開く事は出来ず、小さく隙間から中を覗き込む。
「どなたかいらっしゃいませんか?!」
 懇願に似た思いで叫べば背後から手首をがしりと掴まれた。
「史織さん」
 ぎくりと強張る身体に思考が追いつく。けれど、

 昂良の声とは違うもの……
 恐る恐る振り返れば、そこには深い皺の刻まれた厳つい顔に驚きを浮かべ。朔埜と似た瞳を持つ老人──彼の祖父、水葉が佇んでいた。

 お互いの顔に驚きを見て、水葉は慌てて史織を掴んでいた手を放す。
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