京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
……何だろうと思う。
何とも言えない顔の老人と、変わらずぎらつく眼差して史織を睨む昂良とを、交互に見る。
先程から昂良は朔埜の事ばかり気にしている。
兄弟間の事はよく分からないけれど、やはり兄へのコンプレックスが原因のようだ。
「あの……」
一見完璧な彼にどんな複雑な心境があるのかは分からない、分からないが。
「私はあなたと結婚するつもりはありませんが、もししたとしても、若旦那様は関係ありませんよ」
言っても伝わらないかもしれないが、史織が抵抗するとしたらこれくらいしかない。
「私は若旦那様のものなんて、何も持っておりませんから」
それに自分は朔埜の何でもない。
そう伝えたいけれど、言葉は重く、やっと言えた台詞は言い訳のような言い回し。
どこか驚いたような昂良から目を逸らす。