京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「言っただろう、俺が望むのは過去にあいつに掠め取られたものだ──史織さん」
再び紳士の仮面を着け、笑みを浮かべる。
「君が俺と結婚してくれる事は、今迄すり抜けていった全てのものよりも価値がある。俺にとって君は、それくらい貴重な存在なんだ」
甘い顔に笑みを浮かべて差し出された手。プロポーズの言葉のように聞こえなくもないが……
「……別の何かで埋め合わせ、という言葉は聞いたことがありますが……私はあなたの人生をひっくり返す程の価値を示せませんよ。私はあなたがよく分からないと思っていますが、そもそもあなた自身そう思っているんじゃありませんか? 私にはあなたが自分を見失っているように見えます」
ぴくりと指先が反応するのが見えた。
「落とし物に今迄気づかないくらい、恵まれていたんでしょう。私だったら大事なものを落としたら、すぐに探しに行きますよ」