京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「分かったわ……」
 一人は寂しい。
 父に突き離される母を見ていたから、放られるのが怖かった。
 本当は、まだ努力する余地があると思っているのだけれど……もうそれは違う方向に尽くした方がいいかもしれない。

 幕引きだ。
 自分を大事に思ってくれる人……
 その人がこんなところにいた。
 そしてその思いにくすぐったく感じる自分がいる。

「あたしは馬鹿ね……」
 朔埜にそう言われるより、ずっと嬉しい。
 
 彼らがもう、自分の一部で、大事にしなければならないものだったのだと。急にすとんと、腑に落ちた。
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