京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「俺は別にここにいたい訳やない。用が無いなら今からでも出て行く」

 その言葉に昂良は目を剥いているが、いつの間にか上り框に腰掛けていた水葉は空を仰いでいた。

「ここにあるもんが全部お前のもんやと言うなら好きにすればいいやろ。けど史織は違う。こいつを見つけたんは俺や」
 いつの間にか、ぎゅっと手を掴まれて、こんな時なのに胸がじいんと疼いてしまう。

「嘘だ! 捨てられる筈がないだろう! お前は……帰る場所も無くなるんだぞ……それでも……」
「それでも史織を盗られるよりましや」

 ばっさりと言い切る朔埜に昂良は表情を無くし固まってし、それを見届けた朔埜が踵を返す。
 掴まれた手を引かれるままに。史織は朔埜と共に庵を出た。
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