京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「……他人に敵視されるのが好きか、昂良」
そう言われて昂良ははた、と声の主に目を向けた。
迫っていた女は兄に連れ去られた。
……いつもこうだ。
今度こそ本物だと喜べど、手に入れば形を変え輝きを失ってしまう。手に入れても込み上げる喪失感。
けれど今度は昂良は指先にすら触れられ無かった。
手を伸ばして届かなかったのは、やはり初めてだ。
昂良が望めば誰でも最後には振り返ったから。
きっと彼女も、そうだけど。
でも今回は兄がいたから、そうしたいと思った──
だから、
「兄さんだけが、ずっと僕に存在意義をくれたんです」