京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
ぎり、と歯軋りをする。
「昂良や。儂が朔埜を引き取ったのは、まだ一人で生きていけない子供だったからではない。……家の為だ。あやつはここを継ぐ可能性があったから」
悔しい。
「誰の為でも無く、儂の為じゃ。乃々夏さんと婚約を結ばせたのも、それが良いだろうと、儂がそう思ったからだ。……昂良」
何故この人は、この人の言葉は。
「お前が望むなら、しがらみを捨てる事を誰も咎めない。本当に史織さんが欲しいなら、誰かを通して見るのは止めなさい。そうじゃなければ、ずっと。自分で自分を歪みに縛りつける事になる」
固辞した自分の心を簡単に暴くのか。
一度会っただけの癖に──
「堕ちないと……分からないと思ったから……」
声が震えた。
それは、兄に向けたものとは違う喜びからだ。だって、
「誰も、分かってくれないと……」
大きな家は寂しかった。
沢山の人に囲まれながら一人でいるみたいに感じていた。それを埋めるものが欲しかったのだ。
こんな風に声を掛けて欲しかった。
祖父の手が肩に置かれた。
重い、けれど温かい。
顔が歪む。
それ以外誰も許してくれなかった、自分の心が表に現れる。けど、