京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 それなのに。歯を食いしばって耐えても、頬を伝うものは止められなかった。そんな言葉で簡単に絆される自分が悔しくて恥ずかしくて。そうして俯けばその頭にも大きな掌が乗せられた。

「僕は立派じゃ、ない……」
「そう思っているのはお前だけじゃ。気付かなかったと言うのなら、これからゆっくり知れば良い。お前に人が集うのは、お前に魅力があるからじゃ。そこにお前自身が気付いていないのは、儂からしてみれば意外でしかないぞ。……それでもお前が自分に納得が出来ず、厳しい環境を望むなら、儂がここで躾けてやる。どうだ?」
 わしわしと頭の上を動く手をそのままに、昂良はこくりと頷いた。
 けれど同時に反発心もむくりと湧く。

「どうせなら、綺麗な女の人に言って欲しかった」
「……厳ついじじいで悪かったな」
 思わず吹き出せば、不思議と心も軽くなる。
 
 望んでいた事の一つ……誰かに手を引いて歩いて欲しかった。
 背中を押されるのではなくて。
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