京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
9. 告白
「若旦那様……っ、若旦那様──」
後ろから掛かる声に振り返る余裕もなく、朔埜は急いだ。
急いで。
とにかく急いで。
早くここを離れたい。
あの弟は何でも持っている、光だ。
自分は婚外子で日陰者で、立場の危うい存在。
いつ四ノ宮の名を取り上げられてここから追われてもおかしくない。
今迄はそれでも構わなかったのに。
分不相応だと思っていたのに。
握りしめた手に力を込める。
「若旦那様!」
後ろから聞こえた声に意識が戻る。
「史織……」
息を切らしながら必死についてくる史織にふ、と力が抜ける。途端に自己嫌悪が込み上げた。
「……すまん」