京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
それでも手を離せずに、けれど視線を合わせる事も出来ず。掴んだままの手をじっと見つめる。
細くて白い手。
それが強く掴みすぎたせいか、うっすらと赤らんでいる。でも、離したくない。
「いえ……私こそ、あの……大丈夫でしたか?」
そう言われて朔埜はのろのろと顔を上げる。
「……何が?」
「……若旦那様が困っているようでしたが……お助け出来ませんでした。少し機転を利かせれば良いものを、そのまま出てきてしまい申し訳ありません」
「?」
そわそわと視線をうろつかせる史織に目を眇める。
「えっと、あの……先程のホールでの事です」
「……」
「居づらそうにしていたので……」
ああそんな事かと顔を背ける。
「……お前には関係ないやろ」
「そうなんですが、あの。だからこそ私は踏み込めるような気がして……その、いつも助けて貰ってばかりだから……力になりたかったんです」
「……止め」
力無く笑う史織から目を逸らす。
史織を見てると上手く笑えなくなる。