京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
どうやら混乱を深める史織を見ていると、朔埜は冷静になるようだ。楽しそうに笑った後、再びにやりと口元を歪めてみせた。
「慣れろ、これがお前の選んだ男や」
残念やったな、と無言のままに。肩に置かれた手が語っているような気がする。重い。けれど、やはり嬉しい気持ちが勝ってしまう。
「うう……」
……それにしても。恋と言うのはこんなだったろうか。
今まで相手に焦がれた事しかなかった史織には、何て、言うかこう……追い詰められるような恋は、どうしていいか分からない。
「慣れ……ですか」
多分、それしか無いような気もするが、恥ずかしい事に変わりはない。
もじもじと身動ぐ史織に、朔埜はふと視線を外し、張り付けた笑顔を作った。
「史織、部屋に戻ってろ。後で迎えに行く」
首を傾げている間に背中を押す朔埜を振り返れば、その向こうから乃々夏が歩いてくるのが見えた。
「あ……」