京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
10. 覚悟
「朔埜〜、三芳さんのところでずっと待ってたのよ〜」
「……そうやったな、悪かった」
後ろ髪引かれるように何度も振り返り遠ざかる史織を横目に。乃々夏は風に靡く髪を指先で抑えながらふわりと笑った。
「──で、決まったの?」
柔らかい微笑みと真っ直ぐに向けられる瞳が朔埜を射抜く。ぐ、と喉を鳴らして朔埜は頭を下げた。
「今迄悪かった」
お互いの家とか、事情とか。
似た物同士で仲も悪くない二人なら、上手くやれると思っていた。
けれど史織に会って心が揺らぎ、義務と期待で葛藤が始まった。乃々夏を待たせてまで……仲良くやっていこうと思っていたのに。
史織を忘れる事も出来ず、ただ好きなだけでも駄目なんだと思い知った。
傍にいて守りたい。誰にも渡したくない。
ふ〜んと呟き、乃々夏は首を傾げた。
「朔埜に振られたら、あたしは父の信頼を失っていたもの。それであの家でどうやって生きていけば良かったのかしら〜?」