京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
にこりと、笑顔が攻めてくる。
それに朔埜は罰の悪い顔で目を逸らす。
──絶対的な存在の、あの父の家で……
「だからあたしには、大旦那様の恩を突き離せなかったあなたの気持ちが良く分かるの。あたしたちはきっと上手くやれるんだ、とも思ったの……だから、」
「努力したんやろ……ぜーんぶ丸く納める為に。……よく分かるわ」
「そうよ努力。努力したの。あなたと一緒になるためには、その強迫観念が必要だったの」
「……」
お互いがしがみついていた未来の展望。
けれど今はそこに価値を見出せなくなってしまった。
努力が実を結んでも、達成感は得られないまま、そこからの始まりに足が竦んだ。
違う希望を見出してしまったから……
乃々夏は一つ、溜息を吐いた。
「──それでも……あたしを受け入れて……って言うつもりだったわ……本当は」
「無理や」